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伊藤医院 眼科
有田 玲子先生
まぶたの治療に詳しい有田玲子先生に"ものもらいとリッドハイジーン"について解説いただきました。
眼科医を悩ませているのが「霰粒腫」です。“たかが霰粒腫、されど霰粒腫”で、なかなか治りにくく、マイボーム腺の障害や角結膜障害などを伴う例も少なくありません。以前は、治りにくい霰粒腫は外科的に切開して取り除く治療が行われていました。しかし、重要なマイボーム腺も切除されてしまいます。霰粒腫が多発するケースも少なくなく、何か所も切除したらマイボーム腺がほとんどなくなってしまい、目の表面に油分が供給されなくなってしまいます。お子さんや若年層の例も多く、なるべく切除せずに治すことが望ましいのです。
霰粒腫の原因は脂の詰まりですが、マイボーム腺の健康な脂は32度で溶けます。しかし、高コレステロール血症などの脂質異常では脂が変性して融点が体温より高い38度くらいに上がってしまい、溶けずに詰まってしまいます。そのため温罨法が有効なのですが、欧米では温罨法とリッドハイジーンは必ずセットになっています。
アイシャンプーが登場してから、患者さんの意識も私たち眼科医の意識も格段に変わってきました。目もとの清潔に対する意識が高まったことは素晴らしいことです。実際に、患者さんから「すっきりする」と喜ばれていますし、再発を抑制しているように感じます。目もとをまずはきれいにシャンプーしてから点眼することも、治療の効果を高めるコツです。
とリッドハイジーンでケアを!霰粒腫は、マイボーム腺機能不全とも深く関わっていて、脂の詰まりが原因です。脂の質がわるくなると体温で溶けにくくなり詰まる原因となります。中性脂肪値やコレステロール値が高い人は要注意です。また、最近話題の「まつ毛ダニ」との関連も指摘されており、まつ毛ダニが陽性の人は再発率が高く(文献1)、また、まつ毛ダニ対策が再発を予防することも報告されています(文献2)。感染や炎症を予防するためにも、まつ毛ダニを繁殖させないためにも、アイシャンプーなどを用いた目もとの洗浄習慣を推奨しています。
文献1:Liang,et al.Am Ophthalmol.2014
文献2:Yam,et al.Eur J Opthalmol.2014
※2019年6月発刊 アイシャンプー通信Vol.4より抜粋
伊藤医院 眼科
有田 玲子先生
京都府立医科大学卒業、京都府立医科大学博士課程修了。慶應義塾大学医学部眼科学教室助手等を経て、同大学眼科講師、慶應義塾大学病院眼科MGD外来主任、東京大学眼科臨床研究員ドライアイ外来主任などを務める。
一般眼科のほか、専門領域のドライアイ、マイボーム腺機能不全において多くの研究業績で高い評価を得ているほか、マイボーム腺機能不全の診断と治療の研究・啓発・普及のためのLIME研究会代表としても精力的に活動中。